平成27年からの相続税増税とその対策(H26.5掲載)

平成25年度税制改正により、平成27年(2015年)1月1日以後に相続または遺贈により取得する財産については、相続税の大幅な改正(メインは増税)がなされます。

ここでは改正の主な内容と、それを受けてどういった対策が考えられるか、ご説明します。

遺産に係る基礎控除額の引き下げ(増税)

改正前 改正後(平成27年以降)
5,000万円 + (1,000万円 × 法定相続人の数) 3,000万円 + (600万円 × 法定相続人の数)

上の表のとおり、遺産に係る基礎控除額が改正前に比べて40%削減されます。

たとえば、法定相続人が子2人のみの場合の基礎控除額は、

・改正前 5,000万円 + (1,000万円 × 2人) = 7,000万円

・改正後 3,000万円 + (600万円 × 2人) = 4,200万円となり、

改正前にくらべて2,800万円も基礎控除額が引き下げられます。


亡くなられた方(「被相続人」といいます)から取得した財産の合計額が基礎控除額を下回る場合には、財産取得者は原則として相続税の申告をする必要はありません。

この基礎控除額が引き下げられるということは、これまで相続税について考える必要のなかった方々も相続税の課税対象となる可能性があり、場合によっては事前に対策を行う必要があることを意味します。


近ごろよく「相続税大増税」「今すぐ対策を」などという文句を耳にしますが、それらはこの「基礎控除額の引き下げ」を理由にしていることが多いと思われます。

この改正により相続税の課税対象者は1.5倍以上になるとの試算もあります。

特に、東京23区などの都市部で土地付一戸建を持っている方が亡くなられた場合には、平成26年以前は課税対象とならなかったケースでもかなりの割合で相続税が発生することが予想されます。


ちなみにこの改正は、バブル期に地価の高騰に合わせて引き上げた基礎控除額を、適正な水準に調整するためのものと言われています。

最高税率の引き上げなど、相続税の税率構造の改正(場合により増税)

法定相続分に応ずる
取得金額
改正前 改正後(平成27年以降)
税率 控除額(万円) 税率 控除額(万円)
1,000万円以下 10% 0 10% 0
1,000万円超 3,000万円以下 15% 50 15% 50
3,000万円超 5,000万円以下 20% 200 20% 200
5,000万円超 1億円以下 30% 700 30% 700
      1億円超 2億円以下 40% 1,700 40% 1,700
     2億円超 3億円以下 45% 2,700
     3億円超 6億円以下 50% 4,700 50% 4,200
     6億円超 55% 7,200

上の表の太字の部分、つまり法定相続分に応ずる取得金額が2億円超の場合、相続税率の引き上げがなされます。
先に述べた基礎控除額の引き下げに比べると対象者は限定されますが、資産家や非上場会社の経営者などのうち、一定以上の資産をお持ちの方は対応が必要です。

小規模宅地等の特例の改正(場合により減税)

・特定居住用宅地等の限度面積の拡大

改正前 改正後(平成27年以降)
240㎡ 330㎡

表のとおり、小規模宅地等の特例のうち、特定居住用宅地等について限度面積の拡大が行われます。

(この他に、特定居住用を含む複数区分の宅地等を選択する場合の合計限度面積の拡大も行われますが、ここでは割愛します)


「小規模宅地等の特例」とは、被相続人等が事業用または居住用の宅地等を所有していた場合で、一定の要件を満たすときに、遺産である宅地等のうち限度面積までの部分(=小規模宅地等)について、相続税評価額から一定割合を減額する制度です。

今回改正対象となる「特定居住用宅地等」は、このうち亡くなる直前まで被相続人等が居住していた宅地等で、一定の要件を満たすものをいいます。


たとえば、法定相続人(子)が同居する被相続人の所有する自宅土地(300㎡、更地評価額9,000万円)をすべて相続する場合で、小規模宅地等の特例を適用したときの課税対象額は、

・改正前 9,000万 − 9,000万 × 240㎡ / 300㎡ × 80% = 3,240万円

・改正後 9,000万 − 9,000万 × 80% = 1,800万円

となり、改正前に比べて1,440万円も課税対象額が減少します。


この特例およびその改正を活用することで節税を図ることも可能ですが、取得者等により異なる要件を満たす必要があるため、事前に適用可能かどうかの検証を行うべきでしょう。


小規模宅地等の特例は未分割財産には適用されず、また適用を受けるためには、結果として相続税が発生しない場合であっても相続税申告書の提出が必要ですので、ご注意ください。

その他の改正点(場合により減税)

・未成年者控除の控除額の引き上げ

改正前 改正後(平成27年以降)
20歳までの1年につき、6万円 20歳までの1年につき、10万円

・障害者控除の控除額の引き上げ

改正前 改正後(平成27年以降)
85歳までの1年につき、6万円
(特別障害者の場合は12万円)
85歳までの1年につき、10万円
(特別障害者の場合は20万円)

平成27年からの相続税改正に対し、どういった対策をすべきか

1.相続シミュレーションで現状把握

改正があったからということではありませんが、まずは所有資産と負債を洗い出して相続税のシミュレーションを行い、現状の把握を行うべきです。

中には増税増税とやみくもに心配されている方もいらっしゃるようですが、具体的な数字でおおよその税額を見ておくことで、不安の多くは解消するのではないでしょうか。

相続税の節税を目的に生前贈与を行い贈与税を支払っていたのに、フタを開けてみたらもともと相続税は課税されなかった・・・というような勘違いも、シミュレーションを行うことで防止できます。

今回の改正点の一つである小規模宅地等の特例の適用可能性や、どういった遺産分割をすれば適用になるか等の検討も、この中で行います。

また、節税以上に重要な「各相続人が納得しやすい分割方法を模索すること」も同時に進めます。

なお当事務所では、相続税の簡易シミュレーションをリーズナブルな設定でご提供しておりますので、興味をお持ちの方はご連絡ください。

2.公正証書遺言の利用

相続シミュレーションを行うことにより固まった遺言者の思いを形にするためには、公正証書遺言という形で遺言を残すべきです。

詳しくはこちらの、「公正証書遺言のすすめ」の記事をご覧ください。

3.生前贈与の活用

シミュレーションを行ったうえで効果的と判断できれば、生前贈与の活用を検討すべきでしょう。

現預金等動かしやすい資産の比率が高い場合や、相続予定の財産のうちに非上場株式があり後継者が決まっている場合などには、特に生前贈与を行いやすいといえます。


これらは、毎年贈与契約を行って続けることで相続税の節税効果が高まります。

生前贈与は贈与税の課税対象となりますが、

・贈与税には年額110万円の基礎控除額があること

・年額110万円を超えても、贈与税は超過累進税率という仕組みをとっており、多額の贈与を同一年中にしない限りは適用税率が抑えられること

から、少しずつでも相続人等に毎年贈与を行うことで、税負担を最小にしながら将来的な相続財産の圧縮をはかることができるからです。


さらに場合によっては、相続時精算課税や、教育資金一括贈与(平成27年12月まで)の適用も検討します。

また、生前贈与を行う際には、同時に遺留分についての配慮や、贈与後の相続財産に占める現預金のバランスについての検討も必要です。


贈与については贈与契約書等の証拠を残し、必要であれば贈与税の申告納付を行っておかないと後々の相続税の調査時等にトラブルとなりやすいですから、慎重に行いましょう。

4.生命保険の活用

生命保険の活用も相続税対策には効果的な場合があります。


生命保険金については、非課税の規定があります。

具体的には、受取人数にかかわらず

500万円 × 法定相続人の数

が非課税となります。

ただし、相続人以外の者や、相続放棄者が取得した死亡保険金については非課税の適用はありませんので注意が必要です。


また、生命保険金は民法上の相続財産ではなく受取人を自由に設定できること、極端なケースを除き原則として遺留分の計算対象外とされること、法人の代表者に万一のことがあった場合の備えとしても活用できること等から、相続税に絡むことのみにとどまらず、様々な活用方法が考えられるところです。

5.非上場株式の株価対策

相続税における非上場株式の評価は、

・直近の業績・配当の有無と金額

・会社規模の大小

・所有資産の内容と構成

・所有不動産の評価

・株主構成と、誰が相続するか

・・・等々、様々な要素で大きく変わってきます。

相続予定資産のうちに非上場株式があるケースでは、やはりまず現状の評価額を分析し、株価の圧縮・生前の贈与等、採りうる方針を検討することが重要です。

適用要件等について詳細な検討は欠かせませんが、場合によっては非上場株式等の相続税の納税猶予の適用の検討も必要になるでしょう。

6.最後に

ここまで述べてきた相続税改正についての対策はあくまで一例であり、この他にも不動産を中心とした相続財産の組換えによる評価額圧縮の活用等、さまざまな対策が考えられます。

またこうした対策は今回の改正により急に重要になったものではなく、これまでも重要だったものが、改正を境により多くの人に関係してくるようになったという位置付けになります。

実際には、相続対策をする人の数だけ対策方法もあると言え、したがって繰り返しにはなりますが、まずはシミュレーションを行うことから始めるべきでしょう。

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